主人公は僕だった 

主人公は僕だった
エマ・トンプソン, ダスティン・ホフマン, ウィル・フェレル, マーク・フォースター
B00174W9EI

ある日突然自分が小説の主人公になったら…しかも悲劇の。

まずは頭蓋骨の内側がかゆくなるような設定にわくわくします。自分の人生を書いているのが「主人公を確実に死なせる」ことで人気の女流作家だと知ったら…。設定はそんなですが決してシリアスな映画ではなく、徹底的に時間と数字に拘り決まりきった毎日を過ごす会計検査官の主人公ハロルドが、恋愛を含め本当の人生を生きることに目覚める様子をコメディタッチで描きます。このハロルド役のウィル・フェレルが実にハマリ役で、徐々にその無表情クソ真面目ぶりだけで笑えてきます。ヒロイン役のマギー・ギレンホールもとてもかっこよく、クッキー嫌いのハロルドにお手製クッキーを「ミルクに浸けて食べなさい」と命令するシーンなどにはどM心がときめきました。全体的にゆるめのテンポで、しかも退屈させることもなく、笑いと涙と感動のバランスがほどよい傑作です。

オリバー・ツイスト 

オリバー・ツイスト
ロナルド・ハーウッド
B000F4LD7U
ディケンズの小説をロマン・ポランスキーが映画化。なんとも端正な顔立ちの9歳の孤児オリバー・ツイストがとことん悲惨な目に遭うのですが、悲壮感弱めの音楽のおかげかそう重苦しくはありません。やっとの思いでたどり着いたロンドンでは行きがかり上少年スリ集団の仲間入りするはめになり、結果やはり悲惨な目に…。他の子役含め登場人物のキャラが立っており、非常に分かりやすい物語。特にスリ集団の元締めフェイゲン役のベン・キングズレーの怪演技がお見事。おかげで最後に余計泣かされる。ハッピーエンドなはずなのに鑑賞後に感じる虚しさ、切なさ。自分の立ち位置によってその意味合いがまったく変わってくる善悪、貧富。しみじみと考えさせてくれる印象的なラストシーンも秀逸でなんとも言えない余韻を残してくれる名作。

ボンボン 

ボンボン
フアン・ビジェガス.ワルテル・ドナード, カルロス・ソリン
B000UPBV4Y
好きなんです、こういう「何も起こらない」映画。2004年アルゼンチン作品。20年間勤めたガソリンスタンドをクビになり、娘夫婦の家で肩身の狭い居候生活を送るビジェガス。ある日車が故障して立ち往生している女性に出会い、修理してくれたお礼にと大きな白い犬を貰う。居候生活なのに貰っちゃうところがビジェガス。そう何事も嫌とはいえないお人好し。そして犬舎の名前である「レ・チェン」を犬の名前だと思いこむビジェガス。しかし実はこれが血統書付のとんでもない名犬で、事態は思わぬ方向に、、、。

「子供と動物には勝てない」なんて言葉があるように、物語のすべてを持っていってしまうのが常ですが、この映画の特筆すべき部分は主人公のビジェガスが終始犬に食われてない(噛まれはするけど)ところなんです。このビジェガス、本名はフアン・ビジェガス、、、そう実はただの一般人が本名で出演してるんですね。その朴訥とした雰囲気がこの映画にぴったりです(ビジェガスのみならず出演者のほとんどが素人だそうです)。そして彼の目、あれはまぎれもなく草食動物の目です。どんな逆境にもギラギラのポジティブさで立ち向かうのではなく、流れに身を任せることで乗り越えていくような、諦念と達観の間のような深みを持ったキラキラの瞳。あんな瞳の中年になりたい。ガソリンスタンドのくじ引きで当たった「メン・イン・ブラックみたいな」サングラスを嬉々としてかけながらボロ車を走らせるシーンなど何故か涙が出そうになった。

人と人との出会いも運命だけど、人と動物の出会いもまた運命。
bon

奇跡の海 

奇跡の海
エミリー・ワトソン
B00005V1CQ
ラース・フォン・トリアー監督の全作品を観ているわけではないけど「究極の」映画しか撮らない、撮れない監督なんだろうな、と。この「奇跡の海」で描かれるのはある種の究極、かつ安易な感動を許さない残酷な愛と信仰の物語。ベス役のエミリー・ワトソン迫真の演技と全7章の章仕立てにより150分超の長さを感じさせない。美しくデジタル処理された風景をバックにそれぞれの章の始めに流れる70年代ロックが印象的。この作品でのエミリー・ワトソンを観ていると「ダンサー・イン・ザ・ダーク」でビョークを起用したのは必然なんだなと強く感じる。その「ダンサー・イン・ザ・ダーク」は一切の救いが皆無ですが、それと比べれば最後に一応の救いが用意されているのだけど、今思い出しても狐につままれたような不思議な観賞後感。つくづく一筋縄でいかない監督です。

パンズ・ラビリンス 

PL
ダーク・ファンタジーを超えたサッド・ファンタジーというかメランコリック・ファンタジーというかそもそも“ファンタジー”ですらないかも知れないという、好きか嫌いかで言ったら起立しながら「大好きです!」と言ってしまいそうな作品。確か「ポールのミラクル大作戦」で知って「うちにも抜くと悲鳴上げる植物があるんじゃね?」とか思って庭の草木をばんばん引っこ抜きこっぴどく叱られるような素敵な坊やだった俺。そんな俺にとっては“マンドラゴラ”なんて出てくるだけで悶絶ものなのに、新鮮なミルクに浸けたら動き出すシーンなんてツボすぎてどうしようかと思った。余談ですが「大切なものは引き出しにしまっておきなさい!」と母親に言われ、可愛がっていたミドリガメを引き出しにしまいミイラ化させてしまったのも俺伝説です。本当に感性豊かな素敵な坊やです。

映像的にも素晴らしく美しい。エグいシーンも多々ありますが、いたずらにエグいわけではなくきちんと必然性を感じるエグさだと思います。「子供向けファンタジー」だと思って観てしまった人はご愁傷様です。そしてまたラストシーンがたまりません。切なくも悲しい「ハッピーエンド」。なんだか泣けてくる「ハッピーエンド」。